はじめに
良い医療、正確なエビデンス、豊富な臨床経験を持っていても、それだけでは必要としている企業や医療機関には届きません。
届くかどうかを決めるのは、「価値をどう設計し、どう届けるか」というマーケティングの視点です。これは薬剤や医療機器の話に限らず、医療監修や顧問業務のような専門知の提供サービスにもそのまま当てはまると考えます。
以降では、これまでの集中治療を中心とした医師としての経験をベースに、自身の大学院での経営・経済学の学びとヘルスケアビジネスを結び付けて考察したいと思います。
マーケティングと「セリング」は別物
マーケティングの権威フィリップ・コトラーは、マーケティングとセリング(売り込み型の販売活動)を明確に区別しています。
セリングは、すでにある製品を「合う人にも合わない人にも売る」発想ですが、マーケティングは製品開発・価格設定・流通・販促のすべてを、顧客に「ひとりでにフィットする」ように設計する発想です。
これを医療系コンサルティングに置き換えると、「医療の専門知を売り込む」のはセリングであり、「企業が本当に必要としている専門知に、必要なタイミングで自然にたどり着ける導線を作る」のがマーケティングであると考えることができます。
マーケティング1.0〜5.0の進化は、医療ビジネスの進化と重なる
日本マーケティング協会やコトラーらの整理によると、マーケティングは「モノ中心(1.0)」から、「顧客中心(2.0)」「価値主導(3.0)」「自己実現(4.0)」「人間のためのテクノロジー(5.0)」へと進化してきました。この流れは、医療ビジネスの変遷とも重なります。
- ・1.0 モノ中心:規格化された薬剤・医療機器を大量供給する時代
- ・2.0 顧客中心:EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)とSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング:市場を分け、狙う層を定め、独自性を打ち出す手法)が体系化され、患者ごとの最適解を探る時代
- ・3.0 価値主導:地域医療連携や、集中治療領域におけるCO₂・廃棄物削減の取り組み(いわゆるGreen ICU)のように、理念や社会的価値への共感で選ばれる時代
- ・4.0 自己実現:QOL(Quality of Life:生活の質)向上を「自分らしい医療選択」として提供する時代
- ・5.0 データ×テクノロジー:遠隔集中治療やAI問診のように、データドリブンで人の専門性を拡張する時代
遠隔集中治療の現場においては、テクノロジーが医師の専門性を代替するのではなく拡張する形を目にすることができます。
これはまさにマーケティング5.0が掲げる「テクノロジーの強み(スピード・自動化)×人間の強み(共感・創造性)」の実装例だと感じます。
Medinionの提供価値
医療の専門知は、それ単体では市場に届きません。
届けるための設計、すなわちマーケティングの視点を持って初めて、必要としている企業や医療者にとっての価値として届くと考えます。
ヘルスケア事業への参入や、社内に不足している医療知見の補強を検討している企業にとっても、同じことが言えると思います。
誰に、どんな形で、どのタイミングで専門知を届けるかという設計次第で、同じ専門知の価値は大きく変わる。
そうした「専門知と現場ニーズをつなぐ設計」を担う場のひとつが、医療専門職と企業をマッチングするMedinionであると考えています。
この記事の監修
太田 啓介
医師。救急集中治療の専門医を背景に、現在ヘルステック企業シニアマネージャーとして遠隔診療の実装に取り組んでいる
写真
みなとみらいの夜景

