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海外発ヘルスケア商品を日本市場で展開するために -管理栄養士が見る「価値の再設計」-

海外で高く評価されたヘルスケア商品でも、日本で同じように受け入れられるとは限りません。

それは品質や科学的価値の問題ではなく、国によって健康課題、医療制度、食生活、規制、利用場面、価格の受け止め方が異なるためです。

私は日本の急性期病院と付属クリニックで長年、臨床栄養管理に携わり、その後、オーストラリアの総合診療クリニックで栄養相談と診察時の医療通訳に従事しています。

患者様は現地の方だけでなく、日本人、移民、留学生など多様です。

その経験から感じるのは、「健康意識が高い市場」と「健康的な行動が実践されている市場」は、必ずしも同じではないということです。

健康志向が目立つオーストラリアでも、2022~2024年には成人の67%が過体重または肥満で、33%が肥満でした。
2023年に野菜の推奨量を満たした成人は4.8%にすぎず、菓子、スナック、アルコール、砂糖入り飲料などの「discretionary foods」は、平均エネルギー摂取量の31.3%を占めました。

ジム、ランニング、プロテイン、オーガニック食品などが身近でも、それが人口全体の食事や健康状態に反映されているとは限りません。

「健康に関心がある」「商品を購入する」「継続して行動する」「健康状態が改善する」という各段階には、異なる障壁があります。

 

一方、日本はオーストラリアより肥満率が低いものの、健康課題が少ない市場ではありません。

2023年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の野菜摂取量は平均256.0g、食塩摂取量は9.8gでした。

男性ではBMI25以上が31.5%である一方、若年女性のやせや高齢者の低栄養も課題です。

海外の肥満対策を基に設計された商品をそのまま日本へ持ち込んでも、日本で栄養学的に優先すべきニーズに合うとは限りません。

反対に、「低カロリー」や「ダイエット」を強く訴求することが、すべての生活者に適切とも限りません。

市場で目立つニーズと、栄養学的に優先すべき課題を区別する必要があります。

 

日本展開に必要なのは、パッケージや広告表現の翻訳ではなく、「日本の生活者にとっての価値の再設計」です。

例えば、大容量や高配合は、海外では経済性や高機能性として評価されても、日本では保管場所、一回量、価格、携帯性、使い切りやすさが購入の障壁になります。

栄養素も、多く含むほど優れているわけではありません。

日本人の通常の食事からの摂取量、他の食品やサプリメントとの重複、過剰摂取、医薬品との相互作用まで確認する必要があります。

 

使用場面の設計も重要です。

通常の食事に追加するのか、一部を置き換えるのか、朝食を食べられない日に使うのか、外食が続く日に補助するのかによって、適切な量や形態、伝えるべき価値は変わります。

味、香り、食感、包装、準備の手間、携帯性、廃棄のしやすさまで含め、日本の生活動線に無理なく組み込めるかを考えなければ、継続利用にはつながりません。

対象者、配合量、摂取方法、価格、表示、販売チャネルまで一貫して設計して初めて、科学的価値を継続的な購買と利用につなげられます。

 

さらに、海外で睡眠、免疫、ストレスなどを訴求している商品でも、日本では成分の法的位置づけ、表示できる機能、広告表現、販売方法の再検討が必要です。

研究で使用された成分の形態、配合量、対象者、摂取期間が、販売する最終商品と一致しているかも確認します。

単一成分の研究結果を複合商品全体の効果として伝えたり、観察研究の関連を因果的効果として表現したりすることはできません。

 

管理栄養士が商品コンセプトを評価する際は、

①誰のどの課題を解決するか、

②その栄養素を本当に補う必要があるか、

③科学的根拠と最終商品が一致するか、

④商品を加えた結果、食生活全体がどう変わるか、

⑤味、量、価格、準備、保存を含め継続できるか、

⑥効果の範囲、限界、対象外の人、注意点が正しく理解される設計か


を確認します。

「足す」価値だけでなく、食塩、糖類、飽和脂肪酸、エネルギーを減らす「引き算」の価値も重要です。

開発初期から管理栄養士や医師が関わることで、日本人の食生活とのずれ、栄養学的な不整合、安全性や表示上の問題を発売前に発見できます。

Medinionは、臨床と研究の視点を持つ医療専門家を企業につなぎ、海外商品の価値を、日本の生活者にとって必要性が理解でき、無理なく継続できる形へ再設計することを支援します。

 

参考資料

Australian Institute of Health and Welfare:Overweight and obesity

WHO:Australia health data

WHO:Japan health data

Australian Bureau of Statistics:Dietary behaviour, 2022

Australian Bureau of Statistics:Food and nutrients, 2023

Australian Bureau of Statistics:Physical activity, 2022

Australian Bureau of Statistics:Dietary supplements, 2023

厚生労働省:令和5年国民健康・栄養調査


この記事の監修
ワトキンス 彩子

管理栄養士 / 医学博士 

Paramount Medical Clinic Private Dietitian(オーストラリア)


写真

オーストラリアの春告げ花 、黄金のワトル(Wattle)。

ミモザによく似たオーストラリア固有種です。

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